構想ルート①

私は田舎街の排水溝で生まれた猫だ。


私の母親は私を産んですぐ、
車に轢かれて空になった。


私は排水溝の奥の暗闇で、
毎日来ない母に向けて
兄妹4匹で延々と鳴いて、泣いた。


私も、
私の兄妹も力尽き、
もう死んでしまうんだろう

と思ったある日の朝、
ひとりの幼い少年が
私たち全員を見つけてくれた。

私たちは生きることを選択できた。
よかった。


その子の家はそこまで裕福ではなく、
このまま私たちを
4匹も育てられないということで、
私たち兄妹は離れ離れに暮らすことになった。



その家族が私たちの里親を探してくれた。

どこか私は安心していた。

この家族はとても優しく、そして臆病な家族だ。

変なことにはならないだろうと。


妹と弟がそれぞれ、

優しそうな里親の家に旅立った。

私はもうひとりの弟と数日過ごした。


何日か経ったころ、一人の冴えない男が現れた。


その男はヒョロヒョロで、

どこか悲しそうで少し不気味だった。


その男は私を抱きかかえると、

ポータブルキャリーに私を入れ、

私は弟とその優しい家族と離ればなれになるようだった。


私は少しこの冴えない男をハズレくじのように思い、

残念がっていた。

そしてその男の家には誰も居ず、

男はひとり暮らしだということがわかり、ますます悲しくなった。


しかし、

その男は毎日私に哺乳瓶に入ったミルクを授けた。

わたしは空腹には耐えられないので、彼のミルクを飲み続けた。


そして、そんな日々を繰り返していたら、

私はもう、なかなか大きい猫になってしまった。

もちろんいまはミルクなど飲んでいない。



わたしはこの冴えない男を、

まだあまり好きにはなれない。


彼はタバコも吸う。

けっこう家にいない。

部屋も狭い。


でもわたしの里親は彼になってしまったのだ。

それはもう変えられない運命のようなものだ。




私は彼がどうして一人で暮らしているのかわからないが、

私も彼も一人だということはわかる。


だからわたしはここに居続ける。
私はその運命に逆らわない。

いや、私が選んでいるのだ。

運命など関係ない。くそくらえだ。


部屋のドアが空いていたとしても、

私は遠くには行かない。


すぐそこで、彼が迎えに来てくれるのを待つ。


彼と一緒に生きていくことを、

わたしは受け入れている。



わたしはわたす

今までずっと 自分のことだったけど、 これからは ちゃんと誰かにわたす。 ちゃんともらったものも、 もらってないものも。 わたしは誰かにわたす。

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